旧網走刑務所 二見ヶ岡刑務支所

きゅうあばしりけいむしょ ふたみがおかけいむししょ
  • 移築復原
  • 建築年代:明治29年
  • 再現年代:平成11年
  • 面積:1,933m²
この建物は、網走刑務所の農園作業の先導的施設として明治29年に網走の西方丘陵地に「屈斜路外役所」として設置された。網走湖、能取湖の二つの湖を願望できる位置に建設されその後「二見ケ岡刑務支所」として改名された。1世紀を超えた今日も、網走刑務所収容者の食糧を担う場所として、また広い農場で収容者が作物の管理から収穫まで自立的に行う開放的処遇施設として重要な役割を果たしている。現存する木造刑務所として最古で平成11年博物館に移築した。
各建物の建築年代は、庁舎、舎房、炊場が創建当時の明治29年、教誨堂及び食堂が大正15年、鍵鎖附着所が昭和5年である。明治29年当時は各建物が独立して建っていたが、大正以降施設の重要性が高まるとともに必要な建物を整え、渡り廊下で接続し、庁舎も改築され、ほぼ現状の586坪の農場施設になっている。

庁舎

小規模な洋風建築で外壁は下見板張、屋根は寄棟造鉄板葺きである。小屋組はキングポストトラスで、突出部は和小屋となっている。 南面中央に玄関を付し、南北に廊下を通し、東に事務室、西に宿直室、休憩室という配置となっている。床中央部は煉瓦敷き、他はコンクリートの土間で、天井は鏡天井で廻縁に繰形を施している。
全体的に簡素ですが、玄関の妻飾りや窓上部の蛇腹、扉枠に装飾が施されている。

舎房

舎房外壁は下見板張で屋根は切妻造鉄板葺きで中央に中央見張所が置かれていた。 東に第1舎、西に2舎の直列配置ですが、創建当時は北にも舎房を延ばしT字形の配置であった。
中央見張所は床を板張、天井は鏡天井で二重に蛇腹を巡らして折り上げ、壁は漆喰塗りで竪板張の腰壁を巡らしている。内部は中央を通路とする向かい房で、六畳の広さの雑居房が各20房となっている。通路と房の間の壁は中央を木製扉、両脇断面を平行四辺形とし竪格子で上部に木製竪格子付きの窓が付いている。小屋組は中央見張所がキングポストトラスで第1舎はトラスと和小屋を組み合わせた小屋組、第2舎は下弦材を連結しないクイーンポストトラスに似た形の小屋組である。

教誨堂及び食堂

教誨堂は板敷きの一室で、床を高めて舞台を設け内部の壁は漆喰風仕上げ上下ガラス窓を並べ、竪板張の腰壁を巡らしている。天井は丸形の中心飾りや角型の換気口が付けられている。小屋組はクイーンポストトラスである。
食堂は一室の土間で天井は棹縁天井で、大きな角形の菱形格子換気窓を2ケ所設けている。窓は欄間付引違窓で外部に木製竪格子が付いている。

鍵鎖附着所

農作業に出入りする際に戒具である鎖の着脱を行う場所で、2階建寄棟造、鉄板葺である。 作業場は、平屋建て切妻造鉄板葺きである。
外壁は下見板張。北を足洗場とし、細長い足洗槽を設け、南は洗濯場となっている。2階は雑品庫、衣服庫、図書庫となっており、床は全面板張で頂部に明り取り窓を廻し、天井は棹縁天井を張る外は、キングポストトラスが現れている。

炊場

屋根は切妻造鉄板葺きで、外壁は下見板張、小屋組みはキングポストトラスである。
煙だしを大小2ケ所付けている。ボイラー室をはさんで創建当初の浴場としており、浴槽が2ケ所設けられている。二見ケ岡刑務支所は、全国でも珍しい農園を持つ刑務所の建築群で、明治29年開設当初に遡る主要な建物を残しており、構外泊込作業場から段階的処遇制度の先駆的施設への発展過程を示す遺構として行刑史上の価値が認められ、歴史的学術的に評価され重要文化財に指定されている。

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